金属の溶接方法
- アーク溶接など溶接棒と母材を溶かして接合する「融接」
- 抵抗スポット溶接など機械的圧力や局部的に熱を加えることで接合する「圧接」
- そして「ろう接(ろう付け、はんだ付け)」があります。
当社が取扱いしているのが、ろう接(ろう付け、はんだ付け)に関する商品です。
ろう付けの定義
「母材の融点より低い温度で溶ける溶加材(ろう材およびはんだ材)を加熱、溶融させ母材の隙間に溶かし込み、ぬれ、および毛管現象により母材になじませ、母材を溶かさないで接合する方法」です。
溶接というと鉄工所などで作業員が溶接面片手にバチバチ火花を飛ばして行っているイメージがあるかもしれませんが、あれはアーク溶接などの「融接」になります。融接では溶接棒と同時に母材もある程度溶かして接合します。つまり精密な精度を要求される母材部品の場合は不向きな場合があります。
その点、ろう付けは母材の融点より低いろう材を使用して接合するので、母材への熱影響を極力抑えることができ、精密な接合で、薄肉材や小型部品にも適します。
ろう付けの特長
- 母材を溶かす事なく接合できる
- 小さいワークや複雑な形状のワークにも対応しやすい
- 接合部の気密性が高い
- 接合部は導電性や熱伝導率に優れている
- 異種金属が接合できる
- 大量生産(自動化や炉中ろう付け)もしやすい
ろう付けの仕組み
目玉焼きを作ったあと、フライパンに水を流すと、水滴が表面を粒になって流れます。これはフライパンの表面に油の被膜があるからです。しかし食器用洗剤をスポンジに含ませ、フライパンの表面をこすると水は広がりサラサラと流れていきます。これはフライパン表面の油の被膜を食器用洗剤が分解したことにより、フライパンの表面に水が浸透したからです。
つまりフライパンの表面が水にぬれたことになります。
図の例で言うと水が(ろう)、食器用洗剤が(フラックス)になります。フラックスが金属表面の被膜を除去して、ろうをぬれさせます。
ろう付けにおいてもこのぬれ(水が広がるイメージ)が重要になります。
ろうがぬれれば(広がれば)、隙間に入り込もうとする毛管現象により、ろうは浸透します。
良いろう付けのためのアプローチ
母材部品に対して①ろう材、はんだ材②フラックス③ろう付け加工(加熱源)の3つがうまく組み合わさってこそ、良いろう付けが可能になります。
母材部品
前提条件として母材部品の材質や継手設計(形状、クリアランスなど)が適切になされており、油や汚れが付着していないこと。
ろう材、はんだ材
ろう材の選定は、母材の種類や加工条件によって選定しなければなりません。
- PICK UP
- 各種金属におけるろう材の選択
ろう付けは基本的には、母材に対して異なった金属(ろう材)による接合です。
そのなかでは物理的、化学的に相性の悪い組合せもあります。
例えば、ろう材の代表格である銀ろうは広範囲な金属に適応しますが、電位差が大きいアルミニウムなどは電解腐食を生じ、不適です。
またりん銅ろうは鉄やニッケルと化合物(りん化鉄など)を作り、脆くなるので不適です。
母材同士や母材とろう材など、適合性を見極める必要があります。
耐熱合金 | 工具鋼 | Cuおよび Cu合金 |
Fe | ステンレス | 炭素鋼 低合金鋼 |
Niおよび Ni合金 |
AIおよび AI合金 |
|
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AIおよび AI合金 |
- | - | - | - | - | - | - | アルミニウムろう |
NiおよびNi合金 | 銀ろう 銅ろう 黄銅ろう ニッケルろう |
銀ろう 銅ろう ニッケルろう |
銀ろう 黄銅ろう りん青銅 |
銀ろう 銅ろう 黄銅ろう |
銀ろう 銅ろう ニッケルろう |
銀ろう 銅ろう 黄銅ろう ニッケルろう |
銀ろう 銅ろう 黄銅ろう ニッケルろう |
- |
炭素鋼 低合金鋼 |
銀ろう 銅ろう 黄銅ろう ニッケルろう |
銀ろう 銅ろう ニッケルろう |
銀ろう 黄銅ろう りん青銅 |
銀ろう 銅ろう 黄銅ろう |
銀ろう 銅ろう ニッケルろう |
銀ろう 銅ろう 黄銅ろう ニッケルろう |
- | - |
ステンレス | 銀ろう 銅ろう ニッケルろう |
銀ろう 銅ろう ニッケルろう |
銀ろう りん青銅 |
銀ろう 銅ろう |
銀ろう 銅ろう ニッケルろう |
- | - | - |
Fe | 銀ろう 銅ろう 黄銅ろう ニッケルろう |
銀ろう 銅ろう ニッケルろう |
銀ろう 黄銅ろう りん青銅 |
銀ろう 銅ろう 黄銅ろう |
- | - | - | - |
Cuおよび Cu合金 |
銀ろう 銅ろう ニッケルろう りん青銅 |
銀ろう りん青銅 ニッケルろう |
銀ろう りん銅ろう 黄銅ろう りん青銅 |
- | - | - | - | - |
工具鋼 | 銀ろう 銅ろう ニッケルろう |
銀ろう 銅ろう |
- | - | - | - | - | - |
- PICK UP
- ろう材および金属の融点
ろう付けは母材の融点より低い温度で溶けるろう材が使用されなければなりません。
そのため、母材とろう材の融点の把握と管理が必要となってきます。
人の手による場合は、母材とろう材の融点の差は100℃以上が望ましいです。コンピューターで管理する炉中ろう付けなどはシビアな温度管理ができるので、それ以下でも可能です。
フラックス
金属の表面には大気中では目には見えない酸化被膜が形成されています。
これがあるとろうはぬれません。そのためこれを除去する必要があります。
その役目がフラックスであり、炉中ろう付けでは雰囲気(水素や真空など)になります。
フラックスの選定はろう材と同様に重要で、フラックスの選定でワークの仕上がりを左右すると言っても過言ではありません。
- 母材の素材に適しているか
- フラックスの活性温度と作業温度が適しているか
- 工法に適したフラックスが選定されているか
- ろう材に合ったフラックスが選定されているか
- 母材との親和性があるか
- PICK UP
- フラックスは温度計の役目
手ろう付けの場合などは母材にフラックスを塗布し、加熱していきますが、フラックスの外観により温度がどれくらいなのか把握することが可能です。
これにより、ろうを差すタイミングも掴めます。
-
常温でのペースト状態です。
-
100℃~
フラックスの溶媒は水ですので、ぶくぶくと水分が蒸発し始めます。 -
300℃~
全体が白く、干上がった感じになります。 -
400℃~
ふたたび白濁した液状になっていきます。 -
600℃~
白濁した色から透明になっていきます。 -
この状態がフラックスの活性が始まり、ろう付けに適した温度まで上がってきたことを示しています。
全体が透明になった時点でろう材を差していき、ろうが溶けるかを確認していきます。
活性温度域でろうが周れば、適切なフラックスが使用されているということになります。
ろう付け加工
ろう付けには様々な加工方法があります。母材部品に適した加工方法を選定しなければなりません。
- 炎ろう付け
- 炉中ろう付け
- 高周波ろう付け
- 抵抗ろう付け
-
トーチ(炎)ろう付け(半自動)
-
炉中ろう付け(水素炉)
-
高周波ろう付け
- PICK UP
- 各ろう付け方法に適したろう材
ろう付法/母材 | Al・Al合金 | Ni・Ni合金 | 炭素鋼 低合金鋼 |
ステンレス | Fe | Cu・Cu合金 | 工具鋼 | 耐熱合金 | 金、銀・白金 |
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トーチ(炎)加熱 | アルミニウムろう | 銀ろう 黄銅ろう |
銀ろう 黄銅ろう |
銀ろう | 銀ろう 黄銅ろう |
銀ろう りん銅ろう 黄銅ろう |
銀ろう | 銀ろう | 銀ろう |
炉中加熱 | アルミニウムろう | 銀ろう 黄銅ろう ニッケルろう |
銀ろう 銅ろう |
銀ろう 黄銅ろう ニッケルろう りん青銅 |
銀ろう 黄銅ろう りん青銅 |
銀ろう りん青銅 |
銀ろう 銅ろう ニッケルろう |
銀ろう 銅ろう ニッケルろう |
銀ろう |
高周波誘導加熱 | アルミニウムろう | 銀ろう | 銀ろう | 銀ろう | 銀ろう | 銀ろう りん銅ろう |
銀ろう | 銀ろう | 銀ろう |